一瞬の思い付きが永久保存版に

2021年5月9日 オフ 投稿者: h2l7u3ud

もうかれこれ20年以上も前の話です。
私の父は当時ガンを宣告されており、担当の医師にも「もう来年の桜は見られないかもしれない…」と余命宣告を受けていました。
人一倍ガンという病に敏感だった父に対する宣告後のことを考え、母は父に余命宣告のことはもちろん、ガンであることもずっと伏せていました。
そんな暗い状況の中で一つだけ明るい話題は私に娘が生まれたこと。
父にとっては初孫で、自分の病気のことを薄々感づいていたのか、残りの人生の注ぎうるすべての愛情を娘に注いでいるかのようにも見えました。
娘が8か月か9ヶ月だったある日、地元の写真屋さんで「お気に入りの写真をカレンダーにしませんか」というチラシを目にした私。
ためらわずにお願いすることを決めました。
もちろん被写体は「父と我が娘」。
雪国でしたので冬の前の残り少ない秋の日差しの中、我が家の大きな松の木の下でお祖父ちゃんに抱っこされて、はち切れそうな笑顔の娘とその姿を愛おしく見つめる父の微笑をカメラに収めました。
「ヘタするとこの写真、永久保存版になるかもな…」とふざけた口調の父のつぶやきが聞こえ、心では泣きながら笑い飛ばしていた自分がいました。
写真屋さんでパウチ加工して出来上がった家族写真付きカレンダーは見事な出来栄えで、親戚にも自慢していた父。
今、亡き父のその写真はお仏壇の上でフレームに入って優しく微笑んでいます。
その娘も成長し今回結婚することとなり、婚約者と一緒に仏壇の父の写真を2人で感慨深そうに見つめていました。
永久保存版となった写真の中の父が2人に優しく微笑みかけていました。